音声・言語・嚥下の異常

【発声障害】

発声障害とは、声を生みだす声帯の異常によって、声が出しづらくなったり声の質が悪くなる状態を言います。声帯を動かす神経(反回神経:はんかいしんけい)が麻痺すると声がかれます。この反回神経の麻痺はウィルス感染などでも起こりますが、喉頭がん、下咽頭がん、甲状腺がん、肺がん、食道がんなどによっても起こります。治療としては、声を改善する手術を行うことがあります。声帯の特殊な運動障害にけいれん性発声障害があります。声帯がけいれんしてスムーズに声を出せなくなる病気で、重症の場合ボトックス(ボツリヌス毒から作る薬品)を用いて治療します。声帯にポリープや結節などができて声帯の形が変化した場合にも発声障害が起こります(矢印)。声の濫用や酷使が原因のことが多く、声の安静を保っても良くならない場合には手術が必要になります。発声障害の診断と治療には、耳鼻咽喉科で診察を受ける必要があります。

【構音障害】

咽頭、口腔、鼻腔などの形を変えて発音をし、言葉をつくることを構音(こうおん)と言いますが、構音は5歳までに9割が確立されると言われています。口蓋裂(こうがいれつ)などで咽頭や口腔の構造に異常があると構音障害がおこります。このような構音障害を器質性構音障害といい、手術と訓練が必要になります。言語を習得する段階で間違った発音を覚えてしまった場合を機能性構音障害と呼びますが、訓練により改善が期待できます。成人以降に脳梗塞、神経疾患などで起こる構音障害を運動性構音障害と呼びますが、言語聴覚士によるリハビリテーションを行います。また、耳鼻咽喉科頭頸部外科では舌がんなどの手術を行いますが、手術によってさまざまな程度の構音障害を生じますので、病巣を切除すると同時に構音障害を少なくするための再建手術を行っています。

 

【嚥下障害】

嚥下(えんげ)障害とは、舌やのどの動きが悪くなったり、食道にがんができたりして、食物をうまく飲み込めなくなることをいいます。もっとも多く見られるのは、老化にともなう嚥下機能(飲み込む能力)の低下で、長期間にわたると治療に苦労します。また、脳梗塞などの脳血管障害も嚥下障害の原因として多いものですが、多くの場合自然回復が期待できます。また、ある種の神経や筋肉の病気でも嚥下障害が起こります。嚥下障害の治療で大切なのは、まず内視鏡検査やX線造影検査によって飲み込みの状態を診断することです(矢印)。これによってリハビリテーションや手術などの治療方針を立てていきます。実際にリハビリテーションを行うのは言語聴覚士ですが、治療計画をたてるのは専門的な知識をもった耳鼻咽喉科などの医師です。