鼻の病気

【副鼻腔炎】

鼻(鼻腔)の周りには「副鼻腔(ふくびくう)」と呼ばれる4つの空間(上顎洞・篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞)があります。この空間内で炎症が起きている状態を「副鼻腔炎」といい、以前は「蓄膿症(ちくのうしょう)」という呼ばれ方もしていました。急性期では鼻づまり、ドロっとした匂いのする鼻汁、頬・鼻周囲・額の痛み、顔やまぶたの腫れ、発熱などの症状を認めます。これらの症状が一段落したあとも、なかなかすっきりしないという場合には炎症が慢性化している可能性があります。鼻づまり、粘性の鼻汁、頭重感、匂いがしないなどの症状が続く場合は要注意です。耳鼻咽喉科を受診してください。副鼻腔炎は鼻内視鏡やレントゲン、CT検査をしないと詳しい診断ができません。慢性化した場合の治療方法は抗菌薬を通常の半分の量で長期間服用するマクロライド少量長期療法やネブライザー療法を行います。それでも治らない時には手術加療が内視鏡を用いて行われています。近年では好酸球が局所に多く出現する好酸球性副鼻腔炎が増加傾向にあります。好酸球性副鼻腔炎は難治性で従来の治療が効きにくく、ステロイドを中心とした治療が有効です。喘息を合併したり、匂いがしない、あるいはわかりにくいという症状があったり、鼻茸を伴うことが特徴です。鼻の症状(特に長引く)が気になる場合はまずは耳鼻咽喉科受診を!

 

【アレルギー性鼻炎】

アレルギー性鼻炎とは、本来異物を体内に入れないための防御機構である、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりが病的、かつ過剰に起こる病気です。体がある物質を異物と認めると、それから身を守ろうとして抗体が作られます。再び鼻から異物(抗原)が入ってくると、それと粘膜内の抗体が抗原抗体反応(アレルギー反応)を起こし、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりが発現します。抗原になりやすい物質は、ハウスダスト、ダニ、スギやヒノキを代表とする花粉、犬や猫などのペット、カビなどです。

鼻の粘膜を観察し、鼻みずの中に好酸球(こうさんきゅう)というアレルギーの証拠となる細胞が見つかれば診断がつきます。原因物質は皮膚での反応や血液中の抗体の量を測って知ることができます。

治療の原則は原因物質の排除ですが、実際には困難なことも多く、症状をコントロールするため内服薬や点鼻薬、時には手術も行われます。抗原が分かれば、そのエキスを少しずつ増量しながら注射して反応を起こしにくくするアレルゲン免疫療法(減感作療法:げんかんさりょうほう)は、もっとも根本的な治療法といえます。注射の代わりに口腔粘膜から抗原を吸収させる舌下(ぜっか)免疫療法も開発されています。

【嗅覚障害(きゅうかくしょうがい)】

鼻の最上部、嗅裂(きゅうれつ)と呼ばれる場所に嗅上皮があり、その中にある嗅細胞に「におい分子」が到達すると、神経を介して脳でにおいを認知します。かぜやアレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症などで「におい分子」が嗅上皮まで到達できないと臭いがしなくなります。また、かぜのウイルスなどにより嗅細胞自体がダメージを受けると、しばしば高度の嗅覚障害となります。

検査は、まず鼻の中を観察し、必要に応じてレントゲン検査、CT検査などを行います。嗅覚障害の程度は、においのあるアリナミンの注射薬を静脈注射したり、何種類かの違った臭いを異なる濃度で嗅いでもらって判定します。

嗅覚障害の治療の基本は原因となっている病気を治療することで、鼻の処置、投薬、手術などが行われます。ステロイドの点鼻も効果的ですが、長期間使うと副作用が出ることがあるので主治医の指導に従って使用するようにして下さい。

 

【上顎がん】

上顎がんは、鼻腔の脇にある上顎洞という副鼻腔から発生するがんです。重症の慢性副鼻腔炎が長年放置されると発生しやすくなると考えられています。最近では、慢性副鼻腔炎の軽症化とともに上顎がんは減少しつつあります。がんの初期には骨の空洞の中にあるために症状が出にくく、ある程度進行してから気づかれることがしばしばです。進展方向によって症状は様々で、鼻づまり、悪臭のある鼻汁、鼻出血、歯痛、頬の腫れ、視力障害などの症状が見られます。とくに左右の片側だけにこれらの症状があるときには、注意が必要です。診断にもっとも役立つ検査はCTスキャンですが(矢印)、まず耳鼻咽喉科で鼻、口腔、顔面などの診察を受けられることをおすすめします。治療は、抗がん剤、放射線、手術の3つを併用するのが一般的です。